11月の1ヶ月をかけて行うASIAN KUNG-FU GENERATION特集。
「時代を貫いて響くもの」ASIAN KUNG-FU GENERATIONを特集します。
第1回の「ファンクラブ」に続いて、第2回で取り上げるのは1stアルバム「君繋ファイブエム」と2ndアルバム「ソルファ」です。
それぞれ2003年と2004年の作品ですが、大多数の人にとっての「アジカンといえば」は今もこの2枚だと思うし、この2枚を聴いて青春時代を過ごした人も多いと思います。
自分は当時小学生だったのですが、NARUTOもハガレンも見ないマセガキだったせいでアジカンとの出会いが大幅に遅れてしまいました。
この2枚が出た時のリアルタイムを経験出来なかったことを本当に後悔しています。
今もなおバンドの代名詞として語られる曲が特に詰まってる2枚であり、人気を確実なものにした2枚であり、人気と実像とのギャップと戦った2枚。
改めて曲の感想を書くまでもないと思うので、この特集ではこの2枚のアルバムを”未来” “世代” “永遠”みたいな言葉をキーワードに書いてみました。
2枚のアルバムに刻まれた”永遠の生命”
イギリスの国民的ロックバンド、オアシスの1stアルバムに「Live Forever」という曲があります。
学生時代にアジカンを組んで最初にセッションした曲だそうで、つまりここからバンドが始まった。そう言える曲。
そして、ゴッチさんが音楽を始めるきっかけとなった曲とも言われている。
曲名を直訳すると「生き続ける」
少し言い換えれば「永遠の生命」
この言わば原点と言える曲とそのタイトルに込められたメッセージが「君繋ファイブエム」と「ソルファ」には刻まれているのです。
自分も最近まで知らなかったからこそ、是非ともこの歴史を知って欲しい。
「君繋ファイブエム」の後半に収録されている「E」のアウトロで、「Live Forever」の間奏のギターソロをコピーしている。
初めて日本語詞を試みた自主制作盤にも収録された「E」を最初のフルアルバムに入れたのも「Live Forever」が1stアルバムの曲だからかもしれない。
そしてそんな曲で「ここから僕のスタート」と歌っている。
この原点、ルーツに対するリスペクトこそが、アジカンの音楽が多くの人に、未来に繋がっていった大元に根付いているのだと感じました。
アルバムのEという曲のアウトロに、oasisのlive foreverという曲のギターソロがほぼそのまま入っている。
これは意図的に入れた。
それはなんでかというと、僕がバンドをやりたいなと思うきっかけになったのはoasisで、初めて聴いた曲がlive foreverでした。それで大学に入る直前にギターを買って入学と同時にアジカンを組んだ。そして最初にみんなでセッションしたのがその曲。
その当時、僕とケンちゃんはギターが下手すぎてそのソロがまったくもって弾けなかった。恥ずかしながら。
そして、大学卒業してから作った自主音源にEを入れたのだけど、そのレコーディングでオアシスのソロをそのまんま入れることにした。なぜかというとEは「ここから僕のスタート」と歌っている曲で、新たなスタート(日本語詩でプロを目指す)をするうえでなんとなくちゃんと片付けておきたかったというか、そんなんで自主音源に入れたのです。
で、今回のアルバムに入れるとみなで決めた時にその部分はどうしようかと本気で考えたし無論いくらでもフレーズは思いつくのですが、敢えて僕はケンちゃんにそのまま入れてくれとお願いしました。
作った時の気持ちを忘れたくないのです。
http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/AKG/special/index.html
続く2枚目、今もバンドの金字塔として輝き続ける「ソルファ」のオープニングを飾る「振動覚」にも、原点が刻まれている。
開放弦で”今ここ”を掻き鳴らした、熱という熱が詰まったこの曲で「此処で響く 永遠の生命」という歌詞が歌われている。
「永遠の生命」=「LIVE FOREVER」ということで、引き続き「オアシスを聴いてバンドをやろうと思ったあの時に捧げる部分」を、今度はリフとかでなく歌詞でやっている。(「君繋ファイブエム」の「E」にはLIVE FOREVERのギターソロをそのまま入れてある。)
「夜明けの雨」はLIVE FOREVERの「in the morning rain」からの引用。
http://k.asiankung-fu.com/s/n2/diary/detail/63804?ima=0647&cd=akg_gotch
ただ単に「沢山売れた、人気を確立したアルバム」という認識だけではもったいない。
このようなバックグラウンドを刻みつけたアルバムだからこそ、今もなお不動の代表作として語られる意味があると思う。
そしてこの2枚のアルバムはまさに永遠の生命をもって、今の世代に受け継がれています。
想いは未来に受け継がれている
「君繋〜」の1曲目「フラッシュバック」で叫んでいた「あの日の未来がフラッシュバック」という歌詞。
きっと「醜い過去」の延長線上にある醜い未来のことを歌っていたのだろうとは思うけど、こうして日本のロックをリードし続けている十数年後の未来もフラッシュバックしてたのかもしれない。
今、2018。15年前に世に放たれた曲が次のロックバンドを繋いで、受け継がれている未来を生きている。
単に「曲がカッコ良い」という感想にとどまっていた所から、もう一段階上がった視点でもっとアジカンの魅力を知りたいと思わせてくれたのは、アジカンを聴いて育ってきた自分たち世代のバンドの存在が大きい。
「未来の破片」で鳴らされた衝動、焦燥、
そして「それでも想いを繋いでいてよ」という未来への期待を音に込めるDNAは04 Limited Sazabysに受け継がれた。
(トリビュートアルバムで同曲をカバーし、主催フェスで本人の前で披露した)
「このバンドがいたから今ここにいる」という想いを全開にしてアジカンと同じステージに立って「君という花」を演奏したKANA-BOONとKEYTALKの姿を目撃してきた。
[ライブレポート] JFL presents LIVE FOR THE NEXT@豊洲PIT
今の最新型を好きでいよう ~KANA-BOONとアジカンの2マンライブを観て~
ライブハウスを埋めて、フェスを盛り上げて、より大きなステージに、憧れの存在と一緒に立つ。
上に挙げたバンドは2010年代にロックに育てられた自分たち世代のアジカン的存在です。
今度は立場が逆転して、彼らに影響されて始まった若いバンドと競演を果たすようなことも起こり始めている。
そうやってバンドが次へ次へとバトンを繋いでいく度に、その源流にいるASIAN KUNG-FU GENERATIONの想いも永遠の生命をもって受け継がれていくのだと思います。
自らを歌い継いだ「ソルファ」再レコーディング
ここまで2枚のアルバムに宿るアジカンの原点と、「君繋ファイブエム」とアジカンのDNAを受け継いだバンドのことを書いてきました。
そして、アジカン自身が自らを未来に受け継いだのが2ndアルバムの「ソルファ」の再レコーディング。
1stとかも若い音なんだけど、あれは「若かったから」って言い切れるし、『ファンクラブ』以降っていうのも自分たちとしては納得してて。だけど、『ソルファ』に関してはやりたいことと身体のバランスがすごく悪い感じがしてたから。
バンドの代表作を文字どおり「リライト」することになった理由には、一言でいうなら「やり残したことがあった」という未練と、そうは言ってられないぐらいに当時のバンドの状況が急速に変化していたことが挙げられると思います。
そしてそれ以上に、昔の作品も一時的ではなく永遠のものとして聴いて欲しいという姿勢が生んだとも思ってます。
毎年のようにアルバムを作るよりも、過去の曲をアップデートして新しいリスナーに根付かせることも大切。
音楽も大量に作られて大量に消費される時代だからこそ、1枚1枚の作品を大切に未来に受け継ぐ。そんなメッセージがこの再録には込められているように感じました。
世代の担い手だからこそ人気と実態の間で格闘した
といった感じで、1曲1曲の感想を語るでもなく、「君繋ファイブエム」と「ソルファ」のことを書いてきました。
最後に無理やり感想をねじ込むと、やっぱり若くて勢い余ってる時の作品は大好きです。
「フラッシュバック」のサビのシャウト、間髪入れずに「未来の破片」に雪崩込むスピード感と熱狂をリアルタイムでライブで観たかった。。。
でも今は「リライト」の間奏のゴッチダンスを楽しみにしてるし、大人になったアジカンが歌う「無限グライダー」もグッとくる。
「マイワールド」のアウトロの余韻からの「夜の向こう」のドラムの「ドン!」の入りがたまらないし、再録版の「ラストシーン」~「Re:Re:」の線路沿い3部作の重厚さったらないし、「サイレン」はどっちも最高。
「海岸通り」は豪華にし過ぎないで素朴な感じが良いし、最後は「ループ&ループ」が良かったり。
こうやって聴く側は自由に聴いて楽しんで解釈してって出来る。
ただ作る側の都合に少し寄ってみると、焦りや忙しさなどを考える間もなく突っ走っていたのだろうけど、本当に大変な時期だったんだなぁと思わされる2枚でもある。
「君繋」が売れた時、正直戸惑いました。
あまりの周りの加熱・加速の様に驚き、何がなんだか訳がわからないような状態になってしまいました。「売れる=媚びてる」そういう目で皆が見てるんじゃないかといったような自意識過剰の状態にも陥りました。
http://k.asiankung-fu.com/s/n2/diary/detail/63823?ima=1504&cd=akg_gotch
バンドが大きくなっていくことは嬉しかった。でも思ったよりも自分たちに偶像性があって、イメージが先に転がってく感じがしたから、今度はそっちとの戦いになって。俺たちが対象化してる自分たちと、みんなが思ってるASIAN KUNG-FU GENERATIONのギャップがどんどん広がっていった
『サイレン』『ループ&ループ』はすごく手応えあったけど、このあたりも売れれば売れるほど、さっき話した実像と偶像性とのギャップとのストラグルが続いてる感じはありましたね。お客さんも集まってくるしCDも売れるっていう、いいスパイラルの中に身は置いてるけど、ストレスがないかっていったらそういうわけでもない。ロックバンドたちからは、死ぬほど妬まれたと思うしね
こんな状況とも真っ向から闘って、状況を見つめ直したことで次に「ファンクラブ」のような内向きな作品が出来たと思うし、
結果それでバンドの演奏、表現力に磨きがかかったし、ようやく人気に実態が追いついたと思う。
“永遠の生命”を歌い継いだ、”最終系のその先を担う世代(=ASIAN KUNG-FU GENERATIONとも今は読める)”だからこその宿命だったのかもしれません。
時代を超えて燦然と輝くロックの担い手を、これからも引き続き追って特集していきたいと思います。