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メジャー6年目のKANA-BOON、独りと独りを繋げる新曲「まっさら」について

2014年の7月のこと。

キャッチーなおにぎりの絵と「アイ アム グルメ」とプリントされたTシャツを着て、フロアの最前線で汗だくになって高速ビートを楽しんでいたのは、10代最後の夏を迎えた自分のことだ。

 

超満員のZepp Divercityで行われた、KANA-BOONの初の全国ツアーの最終公演。個人的にも一通りライブのノリや風習にも慣れた時期で、終始笑顔の絶えない夜だったことを憶えている。

 

 

あれから約5年が経った。フロントエリアでもみくちゃになることも殆ど無くなってしまった。

そして、飛ぶ鳥を落とす勢いでシーンを駆け上がっていったKANA-BOONもメジャーデビューして5年以上が経った。

 

2018年から2019年にかけて、デビュー5周年イヤーの1年間でシングル1枚、ミニアルバム2枚、そして2種類のB面ベストと5つの作品をリリースしたKANA-BOON。

その集大成とも言える”6″リリース目に「まっさら」という曲を作り上げた。

 

 

周年イヤーがただのお祝いムードだけではなかったことをこの曲は証明している。集大成かつ新たな始まりを告げる素晴らしいロックナンバーだ。

真っ直ぐ、繋ぎ直す

先に、今回の「まっさら」に至るまでのアニバーサリーイヤーを振り返りたい。

 

「5周年・5リリース」の中で、印象的だったのは夏と冬に1枚ずつリリースされたミニアルバムだ。

それぞれの季節の描写と、ポップサイドの楽曲をリードに据えたコンセプトアルバム。

 

近年のKANA-BOONの楽曲制作はフロントマンの鮪さんのデモ主導で引っ張り上げているのが特徴で、音源からは他の3人がハードルを越えようとパワーアップしていく様が想像出来る。

実際に「アスター」のリリース日に観たライブの演奏が、以前に比べて格段にパワフルになっていたのに衝撃を受けた。

 

 

彼らは更にバンドとしての地力をつけるべく、5周年になぞらえた55本の全国ツアーに挑んだ。

そして、ロングツアーで色んな土地で近い距離でファンと向き合い、繋がりの瞬間が生まれたことで「まっさら」が生まれたのだという。

今は僕らのライブに足しげく通うことはなくなった人や、最新の音源まで追いかけることはなくなった人の中にもKANA-BOONとの思い出は心の奥で生きていて、”近くでライブがあるならせっかくやし観に行ってみよう”と来てくれた人も、もちろんいただろうし。前回のツアーでそういう人たちともう一度繋ぎ直せたというか、手を取り合えた瞬間を体感できたので、そこが歌詞を書く上ではすごく生きたなと。

– Talking Rock! 2019年7月号より

 

コンセプチュアルで記名性の高い作品を経た後の、ストレートでバンド感のある曲というのもまた良い。

ポップとロック、明るさと暗さ、丸さと鋭さ、それぞれが混ざっている音像に、シンプルだからこそ色んな人の感情を乗せていくようなサビ。距離感が近いまま、遠くに真っ直ぐ突き抜けていくスケール感がある。加えてBPMも最近の楽曲の中ではかなり速い。

 

そして何よりも、繋がりを深めるだけでなく「繋ぎ直す」楽曲だということ。

裏を返せば、5年の間で繋ぎ目が解けた瞬間も経験したということだろう。だからこそ、この曲はより強く鳴り響いて聴こえるのだ。

独りの夜を抜けて上昇気流へ

何度でも言うが「まっさら」はとてもカッコ良い曲だと思う。デビューしてから非常に中身の濃い5年間を過ごし、そして今後も長く続いていくであろうKANA-BOONのターニングポイントになると思える楽曲。

 

因みに前回同じような感想を抱いたのは、2016年の秋にシングルとしてリリースされた「Wake up」という楽曲。

この曲のリリース前にはアリーナ公演を含むバンド史上最大規模の全国ツアーを周り、そこで「しっかり挫折した」と話していた。

 

ただ今回は、55本というストイックなツアーを楽しみながら乗り越えられたと、ポジティブな充実感の中にいることが伺えた。

カップリングの「FLYERS」からも、上昇気流の中で自信に溢れている状態であることが伝わってくる。

 

 

デビュー間も無く頭一つ抜けたことで背負った孤独もあったに違いないが、だからこそ今は周囲に繋がりの手を差し伸べてくれる存在でもある。5周年企画の最後に後輩バンドを集めたイベントを開催するのも今の彼ららしい。

 

脂の乗った頼れる先輩バンドとしてもこれから期待が持てる。真っ白いキャンバスにKANA-BOONの色がどのように塗られていくのが楽しみだ。

 

 

 

と、ここまでで記事を終えようとしていたのだが、そうはいかない出来事が起こってしまった。

 

それでもバンドが止まらずに進み続ける道を選んだこと。

またあの4人の演奏が観れるチャンスがあるということ。

めしださんに現状バンドを辞めないという気持ちがあるということ。

 

それぞれの選択を今は尊重している。

 

誰だって独りの夜から
心の願いを聴くものだろう

– KANA-BOON「まっさら」

 

さっきも書いたけど、解けた結び目を繋ぎ直す、そんな場面で輝く新曲だ。彼らは今こそこの曲を必要としていると思う。

 

誰かと共有するよりも、独りで抱えなきゃいけない想いもある。独りで抱えていたいこともある。それが光に転じることもあれば、闇に蝕まれることだってある。

 

それでも想いを繋いでいて欲しい。

時間がかかっても良い。独りの夜を抜けた先で、ステージで4人が輝いている姿が見れる時まで、自分の出来るやり方で励まし支えていきたいと思う。