ド平日に夜行バスで大阪まで足を運んだ先には念願だったロックバンドのワンマンライブ。
このブログで何度か書いてきたが、僕がロックに出会ったのはELLEGARDENというバンドがきっかけ。
ロックというジャンルの単純明快なカッコ良さを教えてもらってからもうすぐ10年だ。
そしてこの10年弱の中で、ノリや盛り上がり一辺倒だった自分にとってのロックの楽しみ方を変えてくれた存在が今回ライブを観たthe HIATUS。
挙げた2バンドの共通点はもはや説明不要だと思います。
the HIATUSの音楽は一聴しただけでは簡単に伝わってこないぐらいに複雑難解。
聴き始めた当初はついていくのが大変だったけど知らぬ間に深く深く入り込んでしまった。
静と動、美しさと激しさ、繊細さと力強さが共存した楽曲は間違いなく僕の楽しめる音楽の幅を広げてくれました。
そんな存在であるthe HIATUSのワンマンライブに初参戦してきた感想です。
研ぎ澄まされた音にフロアもステージも酔いしれた
今回の会場はZepp Osaka Bayside。国内最大級のライブハウスだが、これまで大型フェスでしか観て来なかったのと比べてステージとの距離は圧倒的に近い。
ただハイエイタスのダイナミックな演奏を引き出す規模感も持ち合わせていて本当に素晴らしいロケーションでした。
そんな環境で行われたライブだったので1つひとつの音をじっくり堪能出来たのだからまず文句などあるわけがない。
それでもなおライブ中メンバーはさらに音へのこだわり続ける。
細美さんと一葉さんは曲を演奏しながらも身振り手振りでPAに音の調整を指示していたのが驚きでした。
それは僕らには全然わからない微々たる差なのだろうけど、幾多のステージに立って磨かれた感覚を頼りに、次の瞬間にはさらに良い音を鳴らそうという姿勢。
そこまで理想の音を追い続けているミュージシャンが結集したのだから、そりゃあ難しい曲が出来るわけだ。
でもワンマンライブに集まるオーディエンスだからそんな曲も自由に身を委ねて楽しんでいる。僕みたいなモノ好きが沢山いるんだなと再実感しました(笑)
ちょいちょいひと暴れする曲もあるけど、1人ひとりが音に浸れる余裕がある。
なおかつ歌ってる細美さんの表情を通じてみんなが同じように浸っていることを共有出来る。これが理想のフロアなんじゃないかって思えるぐらいに素晴らしかった。
中盤からは細美さんも
「ビール飲まなくても酔えちゃうな」
「めっちゃ気持ち良くて次どうすりゃ良いのかわかんなくなっちまった」
と言い出すぐらい、フロアもステージも同じように音に酔いしれた空間。
このMCの後に披露されたのが、今回のツアーの楽曲リクエストで1位になった「Little Odyssey」
「星空を見上げるような感じで、そのまま宇宙の彼方に飛んでっちまうつもりで聴いて欲しい」
と言っていた言葉通りの感覚が全身に広がりました。
曲が終わった後、数十秒もの間続いた大きな拍手が、この感覚も周りのオーディエンスと共有出来たことを物語っていました。
月の影に沿って歩き続ける
もう一つ、このライブで気づかされた。
僕がハイエイタスに惹かれる理由はやはりフロントマンの細美さんの存在にあるのだということ。
アンコールでステージに戻ってきた時、細美さんは
「8年間も難解で暗い曲書き続けてるから、やっぱりそういう人なんじゃねぇかなって思う」
と笑い半分で話していたけど、本当にその通りだと思います。
細美さんほど暗い影で孤独と戦い続けてきた人はなかなかいないと思う。
自分に作れる音楽の理想を追い求めて、人気絶頂のバンドから離れてスタートさせたのがthe HIATUS。
その探究心のあまり、常に限界ギリギリのところで曲を作っていたんだろう。
音にどれだけ自分のエゴを表現出来るか、バンドとしてどう鳴らせばいいのか、周りからはどんなリアクションが返ってくるだろうか。
こうした葛藤を一人で抱えていたことで生まれた心の内側の悲痛な声、ハイエイタス初期にはそういった細美さんの心の叫びがそのまま詞になっているんじゃないかという曲が多い。
そして、今の僕はそんな曲を求めていた。
影に隠れながらも内に秘めた想いを強大なエネルギーにして光を放つ。
内から溢れ出たメッセージは強く響き、光は暗い場所だからこそより輝く。
今回のライブで強く感じたハイエイタスの魅力はここにありました。
ライブに集まった他の方々のこの魅力に惹かれてるのだろう。
「Insomnia」で会場全体が「Save me」の大合唱と共に大きく揺れた瞬間
「Lone Train Running」のシンガロングから熱狂の渦に飛び込んでいった瞬間
「一人」が「一人の集合体」となって生み出されたエネルギーは凄まじかった。
暗い影からでも強い光を放つ。一人を必要とする僕らにとって、孤独を肯定して誰かと共有出来る場所。
そんな存在としてthe HIATUSというロックバンドはこれからも必要不可欠です。
燃え上がる感情をこの手に握りしめて、”月の影に沿って歩き続ける”