ライブレポート

Base Ball Bear「Guitar!Drum!Bass!Tour 〜日比谷ノンフィクションⅧ〜」を観た

9/15にBase Ball Bearの”Guitar!Drum!Bass!Tour”を観に日比谷野外大音楽堂へ行ってきました。

 

年末にかけて全20公演行われる全国ツアーの初日公演にして、Base Ball Bearが日比谷野音で2009年から定期開催している主催ライブ「日比谷ノンフィクション」の8回目。

 

ツアー中につき、演奏曲のネタバレは極力控えてライブの模様をお届け出来ればと思う。

ライブレポート

今年リリースされた各4曲入りの2枚のEPのレコ発ツアーとしてアナウンスされた今回のツアー。

年明けにリリースされた「ポラリス」に関しては既に春に行われた全国ツアーで演奏された。

Base Ball Bear “17才から17年やってますツアー”をZepp Divercityで観た – SUGAROCK

なので、実質今回のメインとなるのは先日リリースされたばかりのEP「Grape」の楽曲だ。

 

純然たる3ピースバンドに生まれ変わってからのベボベのライブにおける活躍ぶりは凄まじいものがある。

今年の新曲から関根さんと堀之内さんのリズム隊2人が制作をリードするケースも増え、より強く太くなった2人のリズムの上で小出さんの切れ味鋭いギターが要所で掻き鳴らされる。

 

17年のキャリアで培ってきた確かな演奏力と、バンドとしてセブンティーンを迎えた彼らが一周まわって楽器で生音を鳴らすことへの喜び。

その2つが満ち溢れていて且つ、形を変えてもバンドは続いていくという意志が「ポラリス」には詰め込まれていた。

 

 

そうした要素も受け継ぎつつ、最新作の「Grape」でテーマにしたのはズバリ「秋」

これまでバンドが描いてきた夏の青春模様から1つ先へ進んでいく、歳を重ねた今だから描ける淡い情景。

秋という季節がイメージさせる「実り」や「成熟」が、今のバンドの状態とリンクしているのだ。

 

 

葡萄のように成熟した今のバンドの視点から歌い鳴らした王道ギターロックチューン「いまは僕の目を見て」

夏の終わりの哀愁、そして近づく秋の足音、その架け橋となる9月の情景をリズミカルに届ける「セプテンバー・ステップス」

夏の終わりをアイスコーヒーに溶ける氷になぞらえ、薄まっていくコーヒーを恋心に例えた「Summer Melt」

スリーピースになって生まれ変わった骨太なアンサンブルが弾けるように疾走していく「Grape Juice」

 

これらの新曲を中心に、秋の匂いが漂い始めた9月の野外にロックバンドの演奏が響いた。

 

早くに沈んでいく太陽、曲間に聞こえる鈴虫の鳴き声、高層ビルと公園の木々を通り抜けて届く涼風、秋の訪れを感じさせる野音のロケーションの素晴らしさ。

そしてそれらをステージで躍動する3人の熱量が上回っていった。

 

 

ライブの後半はアップテンポのナンバーを間髪入れずに連発。原曲より遥かに速いBPMで放たれた曲たちから、3人で3つの音だけを鳴らすことのカッコ良さ、衝動感、ストイックさが身をもって伝わってきた。

ベボベのライブの定番曲「LOVE MATHEMATICS」も原曲以上にスピードアップしていたのだが、歌詞に「檸檬」が出てくるパートで紫色の照明がステージを照らしていたのが印象的だった。

紫は檸檬ではなく葡萄の色。バンドとして成熟した今だからこそ、ここまで振り切った演奏が出来ることを物語っているように感じた。

 

 

振り切ったといえば、今回の「Guitar!Drum!Bass!Tour」というツアータイトルも「かなり思い切った名前のツアー」と話していた。

単純明快なツアータイトルが示すように、”メンバーが楽器を持って演奏していることの説得力”こそ、今のBase Ball Bearが大事にしていることそのものなのだと思う。

この「いまは僕の目を見て」のミュージックビデオも、”演奏シーンしか映さない”というこだわりの中で今のバンドの瑞々しさ、凛とした姿を描いている。

 

この曲の詞で歌われているように、言葉を重ねて伝えようとしたり不安を埋めようとするのではなく、最小限の体制でありったけの気持ちが伝わってくるライブ。

そんな演奏を現場で体感した後の、言葉では表し切れない余韻を味わう時間もより格別なものになった。

 

 

新譜に合わせて、夏から秋へ向かう9月に行われたBase Ball Bearの野外の風物詩。

アンコールでは「そのうち出るであろうアルバムも楽しみにしていただいて、もうすぐ制作に入ろうと思っています」という嬉しい言葉も。

 

そして、小出さんから

「もう一つ、Base Ball Bearからリリース情報がございまして、代表して堀之内さんから、、、」

とバトンを受けた堀之内さんからの

「2ヶ月前に息子をリリースしました!!」

という結婚&第一子誕生の発表に、陽が完全に落ちた野音はこの日一番の明るい拍手と歓声に包まれた。

 

小出さんと関根さんは

「MCで困ったら”どうなんですか!息子は!!”って言える」

「何話すか考える必要がなくなる〜」

と冗談半分で話していたが、最後の曲を終えて小出さんが去り際に放った

「バンドって本当に良いもんですね」

という言葉に全てが詰まっていた。

守るべき大切な存在が増えても、同じ方向を向いて共に想いを鳴らしていく。その想いがこの日のライブを通して伝わってきた。酸いも甘いも経て17年止まらず続いてきたバンドも、メンバーそれぞれにとっての家族のような存在に違いない。

 

 

2度目の17歳を迎えて瑞々しく輝くギター・ドラム・ベースの三角形から放たれる実りと成熟。夏を越えてもCRAZY FOR YOUの季節は続いていく。

公私共に実りの時期の真っ只中にいる、今のBase Ball Bearのライブを見て欲しい。