レビュー

RADWIMPSと名乗る僕のアンチからめっちゃ勇気をもらった

日本のミュージックラバーの中でポップウイルスのパンデミックが起こっている平成最後の冬。

 

1週間遅れでRADWIMPSの「ANTI ANTI GENERATION」を聴いた。

 

率直な感想はタイトルに書いた通り。

“まさか”こんなに勇気をもらうとは思わなかった。

尖ったRADWIMPSが聴きたい

2016年「君の名は」の大ヒット、同じ年に出した「人間開花」で外に明るく開いたRADWIMPS。

 

その年の大晦日。NHKホールから超満員の幕張メッセにやってきたメンバーは、紅白歌合戦まんまの純白な衣装で姿を見せた。

そんな、白くて明るいオーラを纏った1年を締めくくり、ライブ中に新年を迎え、最後の曲で「ロックバンドなんてもんをやっていて良かった」と歌う洋次郎さんの姿にとても感動した。

 

それ以降、2016のメガヒットをピークにするまいとリリース、ツアーと止まることなく動いてきた。

 

そして完成したニューアルバム。まず先立って公開されたこのビデオを観て「らしいな」と思った。

アンチを2つも冠したアルバムの曲に相応しい。尖りに尖まくっている。

怒りをぶつけて、言いたいことを言ってこそロックバンドじゃないか。

 

前作の揺り戻しで尖っていて、攻撃的で、白いオーラを脱ぎ捨てたアルバムになるんだと、喉のつかえをスカッとさせる作品になれば良いなと。

 

 

その期待は半分当たって半分外れた。いや、3割当たって7割外れたぐらいかもしれない。

“安泰世代”に向けてのアンチテーゼ

「ANTI ANTI GENERATION」

 

実は2つ目のANTIはアンチではなく「アンタイ」と読む。

そしてアンタイは「安泰」と書く。

 

安泰している世代に対するアンチ。

尖ったバンド像を期待していながら、彼らに尖った矛先を向けられたのは、自分だった。

 

アンタイジェネレーション、ちょっと言い方を変えたら「ゆとり世代」

23の自分はゆとり世代ど真ん中を生きてきて、他人に舵をとってもらい、他人が敷いてくれたレールに無意識に乗っかって少年時代、青春時代を過ごしてきた。

 

そんな、自ら考えるということを知らずに生きてきた自分も、今年は何か異様な空気を感じとった1年だった。

 

安泰がグラグラ揺らいでいる。

自分の好きなロックバンドシーンも、日本の音楽も、若い世代の将来も、この国の社会情勢も。

上手く言葉には表せないしその知識は未だに持ち合わせていないのだけど。

 

 

ネットの波にぷかぷか浮かび、強い波が来たらそれに流され、誰かが選んだ正解にぶら下がって安泰している人に対するアンチテーゼ。

そんな生活が当たり前になってしまった世代を目覚めさせようと、ロックバンドが訴えて来た、そんな作品だと思った。

誰かを負かしたいわけじゃない ただ自らの高みに

ー RADWIMPS「カタルシスト」
Uta-Netより

 

バンドが自らアンチと称し、尖った言葉で突き刺してくるけど、同時に聴き手を救い上げて背中を押してくれる曲の数々。

世代の担い手として「誰かに決められない自分の正解を見つけろ」というメッセージにただただ勇気をもらった。

昨年のシングル曲「洗脳」も、先に載せた「PAPARAZZI」も、「ANTI ANTI GENERATION」と名付けられた作品の中では「こういう風にならないで欲しい」と歌う、実にRADWIMPSらしいエールに聴こえてきた。

 

数十年やそこいらで なに知った気になってんだい?
未開拓で未開発の 自分が何万といるんじゃない?

ー RADWIMPS「IKIJIBIKI feat. Taka」

もしかしたら僕だけ?
って思った その数だけ
君は輝いてる
ヤツらはもうほっとけ

ー RADWIMPS「HOCUSPOCUS」
Uta-Netより

 

アルバムを聴き進めていくうちに、攻撃的な曲にも希望の光が溢れているように感じた。

バンドの枠を超え”世代”で響かせる歌

「君の名は」の劇伴、洋次郎さんのソロ活動も相まって、楽曲はロックバンドという枠からどんどん外へ広がっているし、それを許せるバンドの状態はとても良好だと思う。

 

ピアノの弾き語りも、スタジアム級のスケールのサウンドも、世界の先端にある音楽も、”日本のロックバンド”としての解釈で唯一無二の音楽として鳴らしている。

 

またご存知の通り、この作品は日本のトップに君臨するロックバンドONE OK ROCKのTakaさんや、自分と同い年のニューカマーあいみょんを始めコラボ曲にも富んでいる。

より一層のパワーをもらったと当時に、この国に蔓延る自分も含めた安泰世代を動かすには、そして日本のロックが確かな存在感を放つためには、これだけビッグネームのバンドやミュージシャンが束にならないといけないのだと感じた。

 

アルバムの最後を飾る「正解」は、未来に夢と希望を抱く1,000人の18歳と完成させた合唱曲。

どこか平穏を、あるいは危機感を感じている次世代の若者が、己を取り戻すための作品になって欲しいという意志が詰まっている。

 

もうバンドの枠はとっくに飛び越えている。

このアルバムで鳴っているのは、1人1人の感情に刺さる歌も、みんなで共有したい歌も引っ括めて”世代”で響かせる歌だ。

 

世代という大きな塊が動いている意識を持って、自分だけの正解を見つけてその頂に突き進むことを、ロックバンドは望んでいるはず。

 

自分も早く安泰から抜け出して、アンチ側に立てるようになりたい。