レビュー

アジカンが描く「ホームタウン」は、日本のロックと共に生きる世代に向けて

若い世代と、若い世代と関わりながら生きてる人達
日本のロックバンドが、これからも活躍し続けて欲しいと思っている人達に向けて〜

 

ASIAN KUNG-FU GENERATIONの3年半ぶり9枚目のフルアルバム「ホームタウン」が12/5にリリースされた。

収録曲はシングルから「荒野を歩け」「ボーイズ&ガールズ」

Weezerのリバース・クオモが制作を手がけた「クロックワーク」「ダンシングガール」など。

アジカンらしい、まさにバンドのホームといえるパワーポップ・チューンが揃った10曲入りのアルバム。


ー ASIAN KUNG-FU GENERATION 「荒野を歩け」

そして初回限定版にはストレイテナーのホリエアツシさんをはじめ、バンド外のミュージシャンとのコラボ曲が中心となる5曲入りの「Can’t Sleep EP」を収録。

10曲プラス5曲の”1.5枚組”のフルアルバムになっている。


ー ASIAN KUNG-FU GENERATION 「廃墟の記憶」

 

っていう、そんな形式ばった説明をしにきたんじゃなくて。

この数ヶ月の間、このアルバムを本当に楽しみに待っていたんです。

 

今年一番いいアルバムにしたいアルバムにしたいっていう気持ちはあります。世界とまでは言わないけど、日本の音楽の中では一番いいアルバムにしたいっていう気持ちが、はっきり言うと今、初めてあるかもしれない

MUSICA 2018年10月号 ASIAN KUNG-FU GENERATIONインタビューより

 

ゴッチさんがこう語っているのを読んで、ワクワクが止まらなかった。

この自信に溢れた言葉が聞けた時点で、自分にとっても「これが今年1番のロックアルバムになるんだろうな」と。

2018年の日本で1番のロックアルバム

本当に1番かどうかは勿論リスナーそれぞれの物差しが測るもので「絶対でこれが1番!」なんて断定出来るものではないけど。

 

休日で賑わうカフェで独り、発売日に先立ってアルバムを聴いて、すぐには言葉に代え難い感情が溢れ出した。

自分のために歌ってくれているとも感じたし、次の世代に向けてのメッセージだとも受け取れた。

 

日本のロックバンドの音楽の未来のために、これからの良い流れを作るために、俺たちが引っ張っていこうという姿勢というか。

アジカンだから出来たっていうのもあるし、アジカンがやるからこその責任感も背負ってやってくれたんだなぁとも思う。

新しいことにチャレンジしながら、アジカンらしい音楽を鳴らしている。

 

ロック界を先導してきた存在が今も変化を続け、普遍をアップデートしていくことで、新しい世代の人たちの背中をどんどん押して行って欲しい。

そして若いリスナーも「俺たちのためにアジカンここまでやってくれてるんだ」って気づいて欲しい。

日本のロックの未来へ向けた探求の成果


ー ASIAN KUNG-FU GENERATION 「ホームタウン」

 

MVが公開された表題曲「ホームタウン」をちょっと再生してみれば、”なんか他より良い音が鳴ってる”感覚はわかってもらえると思う。

 

重心が下がった迫力ある低音と、真ん中をクリアに突き抜けるギターの心地良さ。

 

ロサンゼルスで行った前作「Wonder Future」のレコーディングの経験を踏まえて、自身のプライベートスタジオもアップデートしながら辿り着いた音の探求の成果。

 

勿論、自分たちの音楽だけがカッコ良くなればいいなんて話ではない。

日本のロックの音を進歩させたい。日本には面白いバンドがいっぱいいるから、カッコ良い音になって欲しいという思いが、この音への執着と探求心を突き動かしてきたと思う。

 

 

そして、今作はパワーポップを軸とした10曲入りのアルバムと、コラボ曲が中心の5曲入りのEPの2枚組。

こうして盤を分けたのも、アルバムの流れ・コンセプトを大事にしたいリスナーのためであり、また同時にバラエティに富んだプレイリスト的な聴き方を好むリスナーのためだと思う。

元々は「Can’t Sleep EP」のようなコラボ曲中心でフルアルバムを作って、その後に「ホームタウン」のようなアルバムを作るつもりだったそうだけど、結果として今回の”1.5枚組”にたどり着いた。

自分たちのこだわりも捨てることなく、今の音楽の聴かれ方に寄り添った答えだと思う。

CDは近い将来、音楽を聴くためのメディアとしては主役の座から降りることになる。現に、ここまでCDが生き残っている国は珍しい。多くの人たちはサブスクリプションで音楽を楽しんでいる。俺もそうだ。そして、略してサブスクによって、また音楽が人々の手のなかに戻っている。1000円そこらで、数千万曲が聴ける手軽さも魅力だか、過去のアーカイブや新曲たちに素早くアクセスできるのが魅力だ。ミュージシャンたちへの分配もある。

サブスク全盛。かと言って音楽とアートワークの関係は終わったわけではなくて、レコード愛好家たちは着実に増えている。これはとても嬉しいニュースだ。俺もここ10年で、すっかりレコード収集家になった。サブスクで広く音楽を楽しみ、気に入ったものはレコードで(ときどきCDも)買っている。ジャケットが大きくて最高に楽しい。

CDはどうだろう。

俺の予想としては、主役ではなくなるけれど、絶滅までには追い込まれないような気がする。

“HOME TOWNのよもやま話#3″(http://gotch.info/post/180670242102/)

CDが2枚になったことで、パッケージとして手に取った時の厚みも楽しみも増えている。

そして曲目を見ると前作同様、曲タイトルが英語でも併記されていて、英訳された歌詞カードも付属している。

 

ロックバンドが、CDが過去のものになっていく流れに挑んで、世界基準のポップ・ミュージックが鳴らしている太くて強い音をバンドで表現しようという意志の現れが感じられる。

 

まぁ当のメンバー達からはそんなに肩肘張ってる感じがしなくて、”やりたいからやってる”ムードが色んなインタビューからは漂っていた。

「いい音楽は全部売れろ」と思ってますからね。そのほうが楽しいじゃないですか。音楽を取り巻く環境も絶対に良くなっていくだろうし。単純に自分たちに返ってくるって話じゃなくて、若い人たちも音楽を作るためにお金が必要になるときがあるわけで。

俺たちが若い子を多少フックアップして、若い子たちもまたさらに若い子を後々フックアップして…という流れができればいいなと思います。

「自分だけ幸せ」は幸せじゃない、いい音楽は全部売れなきゃ。アジカンが考える“豊か”な音楽人生 – livedoor NEWS (http://news.livedoor.com/article/detail/15688168/)

 

やりたいことが結果として日本のロックの未来に還元されることに繋がっている。これこそがアジカンをリスペクトしたくなる1番の理由かもしれない。

アジカンらしさに立ち返る”ホームタウン”かつ、次の世代のための”はじまりの場所”

これまでアジカンがトリのフェスを何度か観に行って、若手バンドが主催するライブも「アジカンが出るんだったら観に行きたいな」と思って足を運んできました。

ただ深く掘り下げるようになったのはここ半年ぐらいの話。それから今日までは、今年一番のロックアルバムとなるであろう今作の発売を心待ちにしてきました。

 

「ホームタウン」と名付けらたように、”ここに立ち返る”って意味でホーム感があって、アジカンらしさが鳴っている。

それと同時に”次の世代にとってのホームタウンをこれから作っていこう”という「はじまりの場所」でもあると思う。

 


ー ASIAN KUNG-FU GENERATION 「ボーイズ&ガールズ」

 

アルバムの最後を締めくくるリードシングル「ボーイズ&ガールズ」

23年目のロックバンドが「まだ はじまったばかり」と何度も歌うその言葉の重みと温かさ。

そして、アルバムを通してここぞのタイミングで放たれる「オールライト」の6文字に、23歳の自分は何度も勇気をもらい、小さく拳を握りしめている。

「ホームタウン」という作品がアジカンにとってのホームとなり、これからロックと共に未来を生きる世代にとっての拠り所になって欲しいです。

 

これまでもロックバンドが自らの夢を叶える姿を何度も見させてもらいました。

自分も少しだけでもいいので、アジカンのようにこれからロックバンドが活躍出来る環境作りに貢献していきたいと思います。

 

ゴッチさんも言うように、今はCDを買わなくたって音楽を楽しめる環境が整っているから、まずはそこから始めてみて下さい。