Sugar(@Sugarrrrrrrock)です。
11/7にリリースされたMy Hair is Badの「hadaka e.p.」を聴きました。
My Hair is Bad ” hadaka e.p. “「五曲入りの一作品」ではなく「一枚に五作品」というイメージです ご批評ください!
— しいきともみ (@siiki_mhib) 2018年11月7日
とのことなので、新譜の感想と、新曲と各所インタビューから感じたバンドの現在地について書きにきました。
ご批評と言われても、めっちゃ褒めますよ(笑)
1年ぶりの新曲たちは、最初に載せた椎木さんのツイートにも書かれていたように「1枚に5作品」と表現出来るぐらい1曲1曲の顔立ちが異なる、そして力強い5曲。
変わった。音も歌の表現も言葉も確実に進化している。
今年のツアーでホール・武道館と大きい会場を回った経験がアウトプットされている。
武道館でライブをやらせてもらったり、いろんなタイミングがあって。
でも、”このままMy Hair is BadをMy Hair is Badのままにしておくのも、もったいない”というか…。
“もっと変わっていきたい。せっかくだから、My Hair is Badを行けるところまで、レベル99まで上げていきたい”と思って、明らかな変化をわざと付けて、今回5曲作ってみました。https://www.tfm.co.jp/lock/staff/index.php?itemid=12117&catid=36
改めて「My Hair is Badは何を武器に戦いたいのか」という問いに自ら答えた曲たちだと感じました。
追い風がビュンビュン吹いている状況だからこそ、揺られて飛んでいかないように。
今作「hadaka e.p.」はフルアルバムを出すつもりで作っていた十数曲の中から、可能性を広げる順、ゆえに自身でもよくわかってない順で5曲選んだそう。
しかし、その変化によって聴き手にクエスチョンマークを植え付けたり、置いてけぼりにするような曲ではなかった。
丸くなったとか、分かりにくいとか、そんな感想は浮かんでこなかった。
みんなの描いているMy Hair is Bad像も存在しているので、まずは深読みしようとせずに聴いて欲しいです。
とはいえ、”この1枚から大きな変化を感じて欲しい”というのがバンドが期待していることだと思うので、
特に大きな変化を感じた1曲目の「次回予告」とラストの「裸」を中心に今作におけるバンドの変化を書いてみました。
「次回予告」と「裸」に見られるバンドの変化
まず、先立って映像が公開されたリード曲の1曲目「次回予告」
リリースされるまでに既に何度も聴き返してしまったほど素晴らしい。
日々の生活に溶け込むようにゆったり流れる、良い意味で聴くタイミングを選ばない、つまり長きに渡って何年も聴きたくなるような曲。
こういう曲ってこれまでのMy Hair is Badにはほとんど無かった。
後ろ髪を引かれるような淡い経験を詞に残すことで過去の感情を今に抱え込んだり、
逆にそれを振り払うぐらいに生き急ぐような瞬発力を持っていることがこのバンドの魅力だと思う。
なのに、音楽誌MUSICAのインタビューで「赤裸々な、個人的な歌は自分の中で消耗が早い」と、上に挙げた魅力に反するようなことを話していたのが印象的で、
ホールツアーや大きい会場でのライブを経験したことで、相手に聴かせること、時間が経っても鮮度の落ちない詞を歌うことにベクトルを向けたのかもしれない。
そのためなのか、今まで「いつか終わってしまう」と歌っていたのが「続きはこれから」に、
「過去にすがっている」が「今に頼ってる」に変わっていた。
そしてこの曲のラスト。
これからも何度だって 失くしていくけれど
僕らの続きはいつだって 今日だ
今のMy Hair is Badが、このような前向きなメッセージを言い切ることに大きな意味を感じた。
パーソナルで一過性なものではなく、普遍的で一貫性のある、時を超えて響く言葉。
それはラストを飾るタイトルトラック「裸」にも如実に現れていると思われる。
いかにもマイヘアっぽいタイトルかもしれないけど、これまでのラブソングとはベクトルが違うし、特定の誰かに対する感情を向けた曲でもない。
恋人同士の関係、ライブハウスにおけるステージとフロアの関係、そういった近い距離にあった関係性ではなく、
世界とか動物とかそのぐらいの規模感で、より大きな括りの中の人間同士を描いている。
一段上がったステージから見える景色に広がっていく雄大な曲です。
今年の3月のこと、桜が舞う日本武道館のステージで、椎木さんは「恋や愛を歌いたいわけじゃない。命を歌いたい」と叫んでいた。
個人事を吐露するでもなく、特定の感情に寄り添うでもなく、
人間が人間を止めない限り、これからも普遍的に流れていて、世界中のみんなが持っているものを共鳴させる言葉を歌うということ。
そんなメッセージを持つ曲が、今のMy Hair is Badの核にある。
この変化を大きく掲げるための1枚なのではないかと思いました。
この意欲作も次回予告に過ぎないと思っている
ここまで色々思ったことを書きましたが、明確に次のステージを見据えているのと、変化に対するリスクも引き受けたからこそ出来た意欲作だと思います。
この曲を次のツアー、大きな会場で体験するのが楽しみです。
「自分で書いた詞じゃない感覚で歌ってた」と言うぐらいに、パーソナルな感情は影を潜めている分、
時の流れに負けない普遍性、時が経っても誰もが持っているべき人間らしさを歌に乗せた作品。
そして「演奏が良くならないと言葉も聴いてもらえない」と、言葉に負けないような音楽もストイックに作り上げた作品です。
上に挙げなかった3曲を超簡単に紹介すると、
2曲目の「惜春」はマイヘアらしいスピード感のあるギターロックの最新型。
逆にポップな面に磨きをかけた「微熱」
ヘイトな感情を遊びを交えてラップとメタルに詰め込んだ「天才っていいな」
そして「次回予告」と「裸」を合わせた5曲の中から、改めて好きなMy Hair is Badを見出して欲しい。
きっとこの5曲を起点にまた皆さんの好きなマイヘアが育っていくと思います。
確かに今作は目立つぐらいに変化を見せに来ているけど、変化自体はずっと続けているわけだし、まだまだ大きな変化の最中にいるはず。
本来アルバムを出す予定のタイミングで出たEPだし、途中経過を見せてもらった感じですね。
つまりは、この「hadaka e.p.」を挟んだ次のアルバムはもっと期待出来る。
それこそ「次回予告」に過ぎないということです。