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SATANIC CARNIVAL’19 初の大トリで見せた04 Limited Sazabysの勇姿

6月15日に幕張メッセで開催された「SATANIC CARNIVAL’19」の1日目に行ってきた。

 

名門インディーズレーベルPIZZA OF DEATHが主催するメロディックパンク・ラウド・ハードコアバンドの祭典。

 

ここでは、このフェスがスタートした2014年から毎年出演し、今回1日目の大トリを務めた04 Limited Sazabysのライブの模様をお届け出来ればと思う。

模様というか感想というか、ただの日記の延長。。。ということで長めの前置きから始まります。

 

前置き

僕はバンドを始める前から、もともとHi-STANDARDが好きで、ハイスタのコピバンやったのがすべての始まりだったんで、PIZZA OF DEATH RECORDSのイベントに出れるっていうこともうれしかったし、大好きでキッズとしてライブを観ていた人たちと同じステージに立って……ヤバかったですね。あの日は夢が1つ叶った瞬間でした。

04 Limited Sazabys「YON」インタビュー – 音楽ナタリー(https://natalie.mu/music/pp/04limitedsazabys)より

 

04 Limited Sazabysという長くて読みにくいバンド名には少し後悔しているらしいが、今となっては「全国のロックフェスを賑わせる〜」みたいな紹介をされることも多い人気バンド。

そんな彼らが初めて大型フェスに出演したのが2014年のSATANIC CARNIVAL(以下サタニック)だった。このイベントをきっかけにメキメキと頭角を現し、現在もロック・フェスシーンの中心バンドとして存在感を放っている。

 

昨年にはインタビューの引用にも登場したHi-STANDARDが主催する「AIR JAM」に初出演。それにも関わらず主役のハイスタの直前の時間帯という大事な役割を任された。

 

このようにパンクシーンからも評価を得て、毎年出演してきたサタニックでも年々出演ステージや時間帯のグレードが上がっていたことから、今回初の大トリを務めるのは予想の範疇。

先述したAIR JAMのタイムテーブルを見た時はかなり驚いたが、それを乗り越えた上での今回は納得の抜擢だ。

 

 

イベント当日、少しの緊張感を持ちつつ、他にも大好きなパンクバンドが集結したライブを楽しんだ。

昨年のサタニックで大トリを務めたHEY-SMITHからスタートしたメインステージには、この数年間でフォーリミが何度も競演を重ねてきた強者揃いの先輩バンドが出演。

サブステージには、同じくこの数年でフォーリミがフックアップした若手バンドも勇姿を見せていた。

 

SATANIC CARNIVALは、今や全国あらゆる場所で行われるようになった”名前だけのロックフェス”とは違う。このフェスには参加者の自由を規制するようなルールもない。

ライブハウスを主戦場に置くバンドが揃う中、屋内かつ豪華なステージセット、大画面のモニターや照明の演出を駆使して熱演を繰り広げていた。

 

[ライブレポート] 6/15 SATANIC CARNIVAL’19を観た(1日目) – SUGAROCK

 

そして、いよいよ大トリの出番が近づいてきた。

ただそれと同時に、懸念していた事態も起こる。

 

トリ前のメインステージの10-FEETのライブを終えて、ステージを後にするお客さんが後を絶たないのだ。

 

ライブがスタートするのは20時30分と、土日のフェスにしてはかなり遅い。

遠方から来た方は泣く泣く帰路についたのかもしれないし、その時は隣のステージにいて途中から観ようと思っていた人も沢山いたと思う。

 

ただ、ステージの前方でさえも、スタート直前までかなり余裕がある。結構焦るぐらいに。

いつもはライブ開始前にサウンドチェックでステージに現れるメンバーも今回ばかりは出てこなかった。特別感と緊張感と余計な焦りが巡る中、会場は暗転した。

ライブレポート

前置きがかなり長くなってしまって申し訳ない。

 

いつものSEの代わりに流れたのは、この日のために用意されたオープニングムービー。

モニターに金色の文字でバンドのロゴ、サタニックのオフィシャルロゴが映し出されると、まだ満員とは言えないステージから盛大な歓声と拍手が響き渡った。

 

続いて過去の出演ステージと、サタニックでのライブ映像が流れ、5年間の歩みを振り返る。

 

2014 EVIL STAGE OPENING ACT
2015 EVIL STAGE
2016 EVIL STAGE FINAL ACT
2017 SATAN STAGE FIRST ACT
2018 SATAN STAGE HEAD LINER

まだ無名の存在だった初開催の2004年はオープニングアクト。昨年はメインステージの8組中6組目、前半のアーティストより長い持ち時間を与えられるヘッドライナー枠として出演した。

 

そして、

2019 SATAN STAGE FINAL ACT

いつかこの時が必ずやって来ると、毎年1つずつ着実にステップを重ねてきた満を辞してファイナルアクトとしてステージに立つ。

 

暗転したままステージにメンバーが登場し、静かに定位置につく。いつものように4人で楽器を鳴らす始まりではない。

深く息を吸い込み、GENさんの歌声が木霊する。その第一声で前方のオーディエンスは一気に最前線に押し寄せた。

 

「待ちくたびれたぞサタニック!まだ行けるの??メチャクチャやろうぜ!!」

 

大トリのステージ。最初に演奏したのは「Buster call」

2014年に初めてオープニングアクトで出演した時にも最初に演奏した曲。つまり同年に初開催されたこのフェスで初めて鳴らされた曲だ。

メロディックパンクを出自としながら、ジャンルの壁を、オーディエンスの壁を、そして何より自分自身の壁を壊して突き破ってきた。

状況が良くなっても、満たされることなく自身を奮い立たせるように「I can’t be satisfied such thing(こんなもんじゃない)」と歌い続けてきた。剥き出しのパンクスピリットが、いつもに増して訴えかけてきた。

 

この大舞台も通過点に、大事なステージの大事なタイミングで、バンドの逆境を跳ね返してきた曲が、大トリのオープニングナンバーとして炸裂した。

 

「名古屋 04 Limited Sazabys始めます!!」

昔と変わらぬ挨拶から、最新アルバムのトップを飾るショートチューン「message」を叩き込む

 

昨年でバンドを結成して10周年。バンドを始めた当時の自分自身に向けて放つ、当時さながらの直球メロディックチューン。あの頃思い描いた以上の光景を今は見ている。

もちろん、5年前に初めて幕張メッセでライブを行った彼ら自身にも、光り輝くメッセージは届いていただろう。

バンドをシーンのスターダムへと押し上げたのは直球のメロディックパンクだけではない。

続く「fiction」ではステージ全体をレーザービームが飛び交い、ドロップチューンのギターに持ち替えた「Alien」では、ステージ中央のモニターに電脳世界とSF世界を行き来する映像が映し出され、フロアの熱狂を加速させていく。

 

「fiction」は四つ打ちロック全盛期にメジャーデビューした時の曲、「Alien」はメジャーに出てから競演が増えたラウドロックからの影響も感じさせる曲。

時代の流れも受け入れながら、仲間からの刺激を受けながら、それらもバンドの血肉として取り入れてきた。

 

「サタニック6年生、皆勤賞です。いつかトリやると思ってたけど、無事に未来との約束の待ち合わせに成功しました。紛れもなく皆さんのおかげです!」

「初めて出させてもらった時は何千人の前でライブするのも初めてで、最初で最後の幕張メッセだと思ってたけど、あれから毎年立たせてもらってます。今となってはもう庭ですよ(笑)」

感謝と自信に溢れたMCからなだれ込んだ「Kitchen」ではパンクな一面とは別に持つ、ポップでキャッチーなキャラクターを見せる。

 

続けてこの日も多数出演した、バンドの原体験にあるメロディックパンクのヒーロー達へ捧げる「My HERO」

全国ツアーでライブハウスのヒーローという立場を全うし、主催フェスでは後輩バンドにとってのヒーローであることも証明してきた。そして、彼らがヒーローと慕う先輩からも、今となっては一目置かれる存在になっている。

 

「続いてのナンバーは、、、」とわざとらしく溜めを作って演奏されたのは「swim」

バンドの未来に光を射した代表曲と言ってもいいこの曲がリリースされたのは、初出演から数ヶ月後のこと。このフェスとは、それだけ昔からの付き合いなのだ。

ライブハウスを飛び出して、多くの人に届けることにも妥協せず向き合ってきた。

ポピュラーな存在になるという意識を強めたのも、大きなステージを経験したことが関わっているのだろう。

 

 

「まだまだ若く見えますが、僕たちも中堅選手になってきました。見た目は子供、頭脳は大人。上半身は子供、下半身は大人、ヘッドライナー級です」

「正直トリとか全然やりたくなかったんですよ!終わって楽屋帰っても誰も居ないし、お酒とかケータリングも我慢して、終わった後のご褒美にしようと思ってるけど、そのご馳走も今頃どうせCrossfaithに全部食べられてるし」

大役を背負いながらも、緊張や重圧でガチガチになってる様子は一切ない。彼ららしい普段着なMCも織り交ぜてオーディエンスを楽しませる。

 

ただその後、

「ここに集まってくれたのは、俺たちのことがよっぽど好きかサタニックのことがよっぽど好きで今日04 Limited Sazabysがトリでどんなライブやるんだろうって残ってくれた類稀なるセンスの持ち主ですよね?ホントにありがたい。10-FEETで帰って誰もいないと思ってたもん」と言葉を続けた。

メンバーも不安を同じように抱えていた。だけど、このMCの時には余裕があったステージ前方も多くのオーディエンスで埋まっているように感じた。

 

「今日はフェスで楽しむために来てくれて思い出作りに来てくれたと思うんですけど、俺たちバンドマンは思い出作りに来た訳じゃなくて、伝説作りに来たんですよね。今日持ち時間たっぷり貰ってるんで、04 Limited Sazabysの輝きまくってる瞬間を見逃すな!」

と歌い始めたのは初期の代表曲「Grasshopper」

 

普段フェスではなかなか演奏しない曲。サタニックで演奏するのも初めてだったが、フォーリミをよっぽど好きであろう人たちが集まって英語詞を歌っていたのは感動的だった。

 

「沢山きっかけを貰ったこのフェスでトリをやらせて貰えるのは光栄です。フェス呼んでもらったのも初めてだよね? 」

「初めて出た時は10-FEETもホルモンも雲の上の存在で、覚えてもらうのに必死で生意気ばっかり言ってた気がするけど、そんな先輩達とも今は良い関係で一緒ツアー回らせて貰ったりしています」

と語るGENさん。彼らが今居るのは夢みたいな現実。そんな場所で戦っているロックバンドを目撃出来る場所も自分たちにとっては夢みたいな現実だ。

そんな非日常な体験から貰うパワーは明日からの日常を力強く後押しし、輝かせてくれる。

 

「あの日も確か土砂降りの大雨だったと思うんですけど、あれからカッコ良くなった姿を身体いっぱい感じて帰ってください!」

と、雨がバンドを強くさせたと言わんばかりに「Squall」を演奏した。

 

「自分自身に生まれ変われ」という一言で始まる曲。ステージで躍動する姿からは、自然体でいることの大切さと、それがとても難しいことだということを毎回伝えてもらっている。

 

フォーリミもサタニックと歩んできた5年間で、自分が自分でいられる居場所、無理なく身につけられる武器を少しずつ増やして行った。

以前は出自のパンクシーンの居心地が悪かった頃もあったというが、もうそんなことはない。

むしろその違和感をプラスに捉えて様々な分野を越境したことで、後輩、同世代、先輩からもリスペクトを向けられる存在になった。

 

 

持ち時間60分の大トリのライブもいよいよクライマックス。

「初日の絶頂、沸点に達する瞬間がきました!幕張この曲知ってるヤツ何人いんだよ!!」

と、今宵渾身の「monolith」へ。

 

「きっと間違えられないな 6回目のサタニックの大トリ!!」

と叫ぶように歌ったGENさんの大きな歓声が上がった。

最後のサビでは、ロケットが宇宙に飛び立っていくシーンがモニターにコマ送りで流れていた。

 

宇宙に夢を見るよりも音楽で夢を見続けるのがロックバンド。

映画「2001年宇宙の旅」で猿人が石版に触れて英知を獲得したように、バンドはこの曲を作って、窮屈な現実を抜け出し、夢を通過点に変えてきた。

そしてオーディエンスはこの曲に触れて、夢みたいな現実のストーリーの一員となった。

 

「アンコールのこと考えたくないんでラスト1曲いけますか!6年前のサタニックのあの頃の気持ちを思い出せ!!」

と最後に「Remember」を演奏した。が、あっという間のショートチューンに思わず

「ちょっと待って、まだ思い出し足りない!」

ともう一度「Remember」を叩き込んで、颯爽と大トリのステージを後にした。

ライブを終えて

04 Limited SazabysにとってSATANIC CARNIVALとは、バンドを育ててもらった場所でもあり、その恩を返す場所でもある。バンドのルーツを再確認し、より強く鳴らせる場所でもあると思う。

 

6年目で初めて大トリを務めた今回のライブ、他のフェスとは比べられないぐらい特別なライブだった。また、ライブハウスを飛び出して、大小様々な現場においてチームで戦ってきた彼らが9月に控えるアリーナ公演も射程に入れた総合エンターテインメントでもあった。

けどその特別感の中で見せたのは、紛れもなく04 Limited Sazabysの正攻法だった。

 

 

最後に、大トリのステージまでの5年間、このイベントで見続けてきたフォーリミファンと、サタニックのパンクロッカーの皆さんにも大きな感謝を送りたい。

 

自分には過去5年分の記憶はないが、6年分の想いを詰め込んだ2019年のライブの記憶は何年後に振り返っても”あの時の記憶”として色濃く残り続けるだろう。