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04 Limited Sazabysが「SEED」に詰め込んだ、道なき道を行く覚悟と葛藤

「”SOIL”は10年バンドやって来た今だからこそ、自分たちは何処からやって来て何者なのかっていうのを再確認するようなアルバムを作りました。だから特別新しいことはやってなくて、次は”SOIL”っていう土壌にどんな種を撒いてどんな作品を育てるのか、その新しい種を探す旅に出るんじゃないかなと思ってます」

04 Limited Sazabys “SOIL tour”をZepp Sapporoで観た – SUGAROCK(https://www.ysugarock.com/soiltoursapporo)より


2019
年最初のライブ、札幌で行われたワンマンツアーの初日でGENさんはこのように話していた。

 

その言葉通りというか、次はこうするというビジョンが元々あったのか。

「SOIL」というアルバムから1年弱で届けられたニューシングルのタイトルはズバリ「SEED」と名付けられた。

つまり、04 Limited Sazabysの10年間が詰まった土壌に埋める”種”となるのが今作だ。

「SOIL」以降のバンドのミッション

ライブハウスのヒーローを全うした全国ツアーを終え、04度目の主催フェスを含めて世代を問わず現場での競演を重ねてきたフォーリミ。

 

自分たちは何処から来て一体何者なのか。

バンドの出自と、等身大な自分自身を大切にしながらも、広く届けることに挑戦していたのがここ最近のバンドの状況だったように思う。

 

大型フェスでも重要な時間帯を任された。GWに行われたVIVA LA ROCKではパンクバンドが多く集まった最終日にメインステージのトリ前を務め、6月に行われたSATANC CARNIVALでは初年度のオープニングアクトから遂に大トリのステージまで辿り着いた。

 

SATANIC CARNIVAL’19 初の大トリで見せた04 Limited Sazabysの勇姿 – SUGAROCK

 

ライブハウスのヒーローの延長線上にいながら、広く遠くまで届ける影響力を身に着けること。

一見矛盾したこの二兎を同時に追いかけ、共に勝ち取ることが今のフォーリミに課されたミッションだ。

 

その原動力となっているのは、今の状況に満たされていてもおかしくないバンド自身の現状に対する反発。

そして、固定観念に捉われず自立した活動を続けていくこと、新しいモノ・新しいカルチャーを生み出そうという気概だ。

 

そんな今のフォーリミの課題と葛藤、それに対する現時点での答えがこのシングルには詰まっている。

三者三様のタイアップ曲

「SEED」というシングルが今までの作品と大きく異なる点。それは収録された3曲全てがタイアップ曲であること。

どの収録曲も、シングルのリリースが発表される前にタイアップ先で続々と発表された。

固めてきた土壌に撒く種を見つけ、バンドが次のモードに突入していることを実感し期待が膨らんだ。

 

SEED」に収録されている3曲は一言でいうと「ありそうで無かった曲」

タイアップがついているからこそ間口が広くて、耳馴染みが良い曲ではあるが、バンドの原点にあるメロディックパンクの養分が強い「SOIL」の曲と比べるとまた違ったベクトルの力強さで、新しい質感が味わえる3曲だと思っている。

 

特に1曲目の「Puzzle」はライブハウスのヒーローを全うした期間を経て、バンドが今見据えている広いスケールで響かせて欲しい楽曲だ。

ただ、個人的には結構「新しい」「変わった」と感じた割に、当のメンバーはいたって自然体で作ったと言い切っているのも良い。曲自体は真新しく聴こえてくるが、そこに込められたのは今のフォーリミからの等身大で力強いメッセージだ。

 

タイアップというのは「楽曲を通じて自分以外の誰かのメッセージを代弁する」ことだと思う。だが、それだけだどアーティストとしての表現活動よりもサービス業になってしまうとGENさんは話す。

 

サウンド面も歌詞も、相手の背中を本気で押せるかを突き詰めた結果、バンドが常日頃から抱いている感情とリンクしていくのだ。そして表現はシンプルにスタイリッシュに削ぎ落とされていく。

テーマ曲・04 Limited Sazabysインタビュー ~テーマ曲「Cycle」に込めた思い~

 

シンプルになるというのは、曲の主語が広がっていくということでもある。タイアップ先が伝えたい世界観やメッセージはもちろん、自分たちリスナーの当事者意識にも訴えてくる。

そして、何よりもバンド自身の内面を色濃く映しているのだ。

次なる芽吹きに向けて蒔いた種

3曲で8分56秒。フォーリミらしいスピード感であっという間に駆け抜けていく。

 

だが、楽曲のスピード感とは裏腹に、リリースのスパンが比較的長いバンドでもある。

今までの正解を疑い、周りの環境に着せられたものは捨てて、本来持っている武器を磨いて研ぎ澄ますことに時間をかけている。

だからこそ息の長い、簡単に消費されない力強い楽曲が出来上がっていると思う。

 

 

これまで背中を見てきたの憧れの存在はもう横にいて、今度は背中を見せる側になった。

今まで進んできた既存のレールは途切れ、今まで登ってきた山の頂上にはゴールがない。

そこで改めて麓に降りて足場を固めたのが昨年の「SOIL」だった。

 

次に目指すべき頂上も、そこへ至る道も、今は見えそうで見えない。そんな葛藤を詰め込んだ音楽の力で自ら切り開いていかなくてはいけない。

大きなパズルの欠けているピースを探すような広い視野と、四つ葉のクローバーを探すように今の足元に集中する視点。その両方を持って戦っていく。

 

フォーリミGENが見据える次の闘い。ロックが自由であるために – CINRA.NET

 

三者三様な「SEED」の楽曲だが、こうした姿勢がどの曲からも共通して伝わってきた。

 

そして、これから出てくる芽を実りあるものにするために、我々リスナーも04 Limited Sazabysという土壌から沢山の可能性が花開くための大事な種となり肥料となる必要がある。今作がそのような意識を強める機会になったら良いなと思う。

 

来たる9月29日に、04 Limited Sazabysはさいたまスーパーアリーナでワンマンライブ「YON EXPO」を開催する。

「バンドが進んでいく方向を再確認するような日にしたい」とGENさんが話していたように、これまでの集大成というよりは、これからに向けた種蒔きのような1日になると思う。是非とも多くの人に目撃して欲しい。

 

人気も立ち位置も確立されつつあるようで、まだまだ未完成なロックバンドなのだ。